象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

古書象々の本買う理由ーその7 『陀田勘助詩集』

これは、古本です。

一応このブログは新刊で買った本をなぜ買ったのかということを中心にチラリとその内容を紹介したりしなかったりする予定で書いているのですが、第4回目のダダカンの本の流れでこの勘助詩集に至る「本買う流れ」を書いてみようかと思います。

何のために、と言われると困るのですが、まあ、書くのに理由はいらないでしょう。

 

まず催事用の本をせっせと自宅で準備している時に、値付けしようと手に取った「小松隆二著 日本アナキズム運動史」を、ほんとうに何の深い考えもなく、いつか読んでみようと積ん読本の山に積んどいたのはもう随分前のことです。それから何度も、積ん読本から何か読もうと積んではくずししている時に目に留まりましたが、手にして読み始めることはありませんでした。

ネットか何かで「北園克衛1920年代実験小説集成20’s」という本が出ているのを知り、面白そうだと某大型書店に買いに行くも見つけることができず、詩集の棚の最果タヒとか谷川俊太郎とか茨木のり子とかで目がちかちかしてきたころ「ダダ・カンスケという詩人がいた 評伝陀田勘助」という本を見つけ、積ん読だけで読んでもいない「日本アナキズム運動史」を思い出してなんか関連性とDADAという響きに惹かれて購入する。この道に進め、と呼ばわる声がする。

お金を払って買った本はやっぱり元を取らなきゃなりませんので積ん読行きにはならず割と熱心に読み進め早々にダダカン読了。しかしその内容にやや物足りなさを感じその足りなさを埋めてくれるかもしれない「日本アナキズム運動史」をとうとう読み始める。

半分ほど読んだある日、古書組合の市場へ行くと20冊ほどの詩集の束が。なんか面白そうなタイトルあるかなあと目を凝らすと、「評伝陀田勘助」で資料として大いに活躍していた国文社刊の「陀田勘助詩集」が目に留まる。これは買って読むしかないなあと思い束全体を見渡して入札金額を思案する。この束のキキ目は残念ながらダダカンではなく、大岡信の処女詩集、ユリイカ版の「記憶と現在」やろな。敵はこれを踏んで入札する。けど私のほしいのはダダカンで、読書用で、できるだけ安くに落札したい。しかし、この時代のユリイカだとか昭森社だとか国文社だとかの慎ましやかな姿をした詩集はやっぱりええなあ。けど、大岡のヤケとカバーの傷みが気になる。敵もそんなに入れへんかもな。あとは平出隆「胡桃の戦意のために」。なんか世代がばらばらやなあ。これも少し薄汚れているし、そんなに評価する人おるやろか。他はまあ、安くしても売れるかどうかというタイトル。商売的にはあんまり必要ない気もするし、ダダカンは買いたい。探せばどどっかの古本屋に売ってるやろうけど、今日出会ったこの市場で、この本を買いたい。

 

ボロい大岡信+やや薄汚れた胡桃+ダダカン。

思案六歩。

売値くらいの金額を書いて、入札用の紙を封筒に放り込む。

店で、落札した詩集を値付けしてみて愕然とする。私の入札金額に迫っていた2番手の本屋さんがうらやましい。市場で、負ける方が良いこともあるのです。うれしいような、悲しいような、市場で落札した本が、落札した後にそんなによく見えなくなる、というのはままあることなのです。

そうした流れで、今ここに、晴れて、「陀田勘助詩集」があるのです。読めるのはうれしいですけど、なんかビミョーな気持ちです。

 

今日5月の谷町の即売会用の文庫の値付けをしながらまた1冊積ん読送りに。

大杉栄著「自叙伝 日本脱出記」

読書は続きます。人生が続く限り。

そして死んだら、何もなくなる。

古本屋は、まあまあ楽しい商売です。

 

陀田勘助に関する古本の買取は、古書 象々へご相談ください。

詳しくは古本の出張買取についてをご覧ください。お電話 フリーダイヤル0120-313-002メールでのご相談は古本買取のお問い合わせにて承ります。大阪、京都、奈良〜近畿一円、古本、版画、建築書、骨董など全国出張査定/買取いたします。

古書象々の本買う理由ーその7 『陀田勘助詩集』
古本屋の日記 2023年5月15日