象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

今竹七郎先生の詫び状

振りと椀伏が適度に交差しながら午後の市場の時間がゆっくりと過ぎてゆく。少し、ウトウトする。振り手が、古い、本だか何だかわからない色々を講釈してゆく声が心地いい。眠りそうで眠らない。ウトウトと、ふと、目の端に気になるモノが映って、発句に軽く乗っかって声を出す。と、隣のフルカワがさらに被せてくるので負けじともう一声だそうと口を開いて、やっぱりやめる。一瞬の判断。○○円でクラインさん、と振り手が落として、どどっと、本と云うか紙の束がフルカワの手元に送られてくる。それを、後輩である僕が纏めて、席の後ろのテーブルに並べる。紙束の中から一冊抜いて、フルカワさん、これ、というとあげる、とはいわないで、XX円といって手を出す。争うばかりが、市場ではない。

グラフィックデザイン

 

 

そうして、僕の手に落ちてきた?「今竹七郎 虚像と実像展 1971今橋画廊」の案内状と数葉の作品プレートを納めた紙タトウを開いてみると、中になにやら手紙が入っている。紙には「COPY SECT/IMATAKE STUDIO」と印刷されており、今竹先生のスタジオの専用便箋であることがわかります。読んでみると先生の詫び状。某大兄宛に、手違いで案内状が送られず、パーティーにも来ていただけなかったことを詫びる丁寧な内容(と、言い訳が少々)。となりでフルカワが「得したな、象ちゃん」と笑って話すのに頷きながらも、詫び状ではなあ、売れんなあ。と少々がっかり。ま、これはこれでおもろいもんやけどね。しかし、関西、というよりも、日本のグラフィックデザイン界の大重鎮の今竹先生がこんなに丁寧に詫びを入れるデザイン界の大兄とはいったい何ものなのでしょうか?知らん人やけど、僕が無知なだけやろか?

古本屋の日記 2011年9月11日