象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

一杯やる。

「何故呑まないかと云うとお小遣いがないから」

「おごったげる」

「……」

「おごったげる」

「うん」

 

禁酒とは、恐ろしいものである。勝手に、自己反省しそうになるなんて、たまったものではない。自分が、目利きでないなんてことに気づく必要は全くないのである。自分を顧みたって、何も変わらない。変わった振りをする奴もいるかもしれませんがね、神様はご存知ですよ。相変わらず、黒いバナナのようなドスを隠し持ってるじゃあないか。自分の目の良し悪しなんて考えるのはシラフの神経症。象々は、もっと大らかに、売れないモノをどんどん買い続けるホイホイ地獄を生きればいいのである。売れないモノの山に囲まれて、ほおっと、大きなため息をつく、その時、もしかしたら古物の道に関する名言が生まれるかもしれないけれど、それは、残念ながら誰にも聞こえない。たぶん自分にも。ガラクタがカタンと音を立てる。おまえも、まったくダメなモノではないよなあ。と、なんにでも、やさしく声をかける。シラフの人は、冷たいからね。僕は、もう大丈夫。ああ。お前たちを見捨てない。ここの、やきとりは、いけるねえ、玄さん、もう一杯もらってもいいですかね、これは、なかなかうまい酒だよ。

古本屋の日記 2011年8月29日