象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

大当たり。

遠くの街の古本の先輩が、チャイナ銘柄で一山当てたという話を風の噂に聞く。あっちとこっち。春の幸福者がふたり。そうか、そんなこともあんねんなぁーと、遠くの空に思いをはせながらわたしがなんか希望を持つと思うでしょう?いえいえ、そんなことはありまへん。待てど暮らせどわたしんとこにはええもんけえへん。見上げる空はいつも空っぽ。そや、だいたい、パチンコも麻雀も競艇も、誰もが一度は大勝ちしたことあるみたいやけど、ワシ、どれもこれも持ち出しばっかりでええこといっこもなかったし。一回でええから台が壊れたみたいにチンジャラチンジャラ玉出でほしい。間違って買うた舟券がびっくり仰天万舟で、麻雀やったらなんもせんでもたまげた天和。ああ、しゃあけど、そんなことが4回5回と続いたら、根が小心者の古物商、今度はきっとなんか悪いことが起こるに違いない。車のタイヤの空気抜かれたり、道を歩るけば若モノに理由もなくしばかれたり、なんや腹痛いでガンちゃうか今にこの青空が落ちてくるに違いないこわあてワシよう外出えへんああそんなことになるくらいやったらこのまま空っぽの空見上げてる方がええかもしれんなあ。

 

けど、待ってるでえ。

i’ll never forget you   
i’m crying

(戸川純 眼球奇譚)

古本屋の日記 2015年4月9日