象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

こぶ。

あたたかい日。早くも、一月、消えてなくなる。なにかを取り損ねつづけているような気持ちがするがなにを取り損ねているのかわからない。どんどん、指の間から滑り落ちてゆく……。

 

一月でいちばん印象に残ったことは、松屋町筋でよくすれ違う、八方破れた女装の路上生活者、髪の毛を、往時の田村亮子のように柔ちゃんくくりにした、浅黒い、ちっちゃい、汚れた顔のおっちゃんの額に、なんかでこすれたような跡のあるどす黒い大きなたん瘤を見つけたことです。どうしたんやろか、おっちゃんは病院とか行くことあるんやろうか?と、小学生の作文のように非常に気になって、愛車の手押し車にもたれるようにして冬の寒空に立ち尽くしていた姿をしばらく忘れられずにいたのですが、昨日見た八方破れの女装子(じょそこ)は自分の身体の異変など全く気にもならないようすで相変わらず独り言をつぶやいて手押し車を押して歩いていたので、そうであるか、どうあろうとも、ただただ、生きてゆくだけなのだなと、妙に納得して、自分でも何が云いたいのかわからないままちょっと作文してしまいました。こぶ。こぶ。

古本屋の日記 2013年2月2日