象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

さらに、雨。

段々暖かくなってきて、こう、雨ばかり降ると、あいつのことが気になる。百足(ムカデ)。土間だからね、うちは、居心地いいんだ、ゲジ公には。あの、ぎらんとした、橙っつうのか、もっと、禍々しい、色、を背負って、どんな動きしてるんだか、個々には見分けることが出来ない無数の足が、常にざわめく不吉の予兆として、とらえどころのない、不安のウェーブとして、土間と本棚の隙間からこちらへ向かってくる。言葉以前の世界、ただ威嚇し攻撃するためだけの力が、うねって、生き物の形をしている。間違いなく、肉食だね。人間様にでも、ただひたすら凶暴な意思だけをたよりに向かってくる。棒で押さえると激しく咬む、のたうって、咬む、小さな虚空を、咬む。いくら僕でも、お前を受け入れることはできないよ。足が沢山あっても、愛嬌には、ならないねえ。

 

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営業用にしては、日記が暗いという人がいる(前にも誰かに云われたな)。けれど、明るいところに、何があるのか?光があふれた場所には、なにも、本当のことがない。ゲジ公も、居心地が悪い。明るい場所には悲しい音。暗い場所には陽気な楽団。

 

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おっさん、雨ばっかりやのお。

古本屋の日記 2011年5月29日