象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

恥ずかしいわたしを。

雨だねえ。今年の桜は、もう散ってしまうのでしょうか?などと思いながら外に出る事もなく、なにをするでなく、家でごろごろテレビを見る。NHKに芥川賞作家の金原ひとみが出てなにやら話している。荒れた十代のこと。父が本を与えてくれたこと。書いた小説の誤字脱字のチェックを父にしてもらっていたこと。「親が地元に住んでいられなくなるくらいもっと滅茶苦茶に恥ずかしいことを書け」と父に云われたこと。……。などなど。なるほど、そんで「蛇にピアス」なんだねえと妙に納得する。十代の娘の書いたものを冷静に読んで誤字脱字のチェックをしてもっと滅茶苦茶に書けと云える父とはまた随分肚のすわった男であるなあと感心していたら、金原父は、なんと、某大学の児童文学の研究者であるという。自分の恥ずかしいことが世間様にバレても歩きづらいだろうに、児童文学の研究者の娘の恥ずかしいことを自らもっと晒しちまえとは、そこらの作家よりもよほどの覚悟をもった文学者であると感動する。とはいえ、人には云えないような物事を恥ずかしさを乗り越えて書くのが作家になる為のハードルだとしたら、そんな赤裸裸主義がもし文学の世界に蔓延したら、赤裸裸モンスターがさも何事かを語っているように作家も周りも錯覚するようになったら、と思うと、思わず赤面、赤裸裸も書く方法の一つでしかなく、たーだ赤裸裸であればよいというものではなく、それじゃあただの変態な訳で、赤裸裸も一つの厳つい文章技術にまで高められなくてはならないと、ひとり勝手に興奮して、カレーの残りを食べる。むしゃむしゃ。水。

「この赤裸裸、イカツイやん」

古本屋の日記 2012年4月11日