象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

ラーメンを悲しむ。

とはいうものの、そのおっちゃんのラーメンが今まで食ったラーメンの中で一番まずかったのかというと、そうではない。世の中、上には上がいるものである。おっちゃんがずくずくなら、その兄ちゃんの作るラーメンは、ツップツップである。一瞬歯ごたえを感じそうな感触が歯に伝わるその瞬間、期待を裏切るようにツプッと、麺が切断される、ある意味個性的な噛み心地。無抵抗な何かの死体を噛み切った時のような感触に一瞬麺を宙にかざして見入ってしまう。まずい、というより、不気味。おっちゃんのラーメンはまずいと云う味だが、その兄ちゃんのラーメンは単なる不始末、を隠蔽した感触である。目隠しをして、何か不吉なものに触れている、あの感じ。ただ、兄ちゃんは、自らのラーメンについて語ったりはしない。どちらかというと、気まずそうに、居心地悪そうに、厨房からこちらをみている。僕と玄さんの目の前にあるモノは、少なくとも悪意によって生み出されたものではないと納得することのできる、弱々しい視線。頑張って、こいつを、平らげなくてはならない。兄ちゃんを、傷つけてはいけない。これは、君の愛が行き場所を間違って今ここに、現れているのだから、うまい、とか、まずい、とか、そんなことは関係ないんだよねお兄ちゃん。君は、この地上で、ただなにかがしたかっただけ、それは、なんでもいい、ただ誰かに触れてみたかっただけ、だだ自分のあることを自分で自分に知らせたかっただけ、君は世界に恐る恐る手を伸ばしている、だけ、だけ、え、この野郎、本当はラーメンの事なんて知りもしないんだろう、お前、おい、随分と長い間寂しい思いをしたんだねえエこの死体麺を、俺に食えってか、そりゃあ俺も玄さんも最後まで食ってやりたいとは思うけど、お前の孤独を食わねばならない今日の不運を、俺は本当は泣いているんだぜ。

 

というか、天神さんの、準備準備、と。

というか、絶不調の時でもトリプルアクセルに挑む真央ちゃんを見習って挑戦した「萬巻」……やっぱり、着氷失敗やね。ツーフット、どころかスッポ抜け。真央ちゃん、今シーズンはどうやろね?あまり悪いと、よう見いへんから、おっちゃんを、元気にする演技見せてほしいね。

古本屋の日記 2011年10月5日