象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

慈悲と修羅

昨日は一応、空想的マッチョになって世界と闘う姿勢をとったのですが、あおーい青い空に見下ろされたちっぽけな自分を発見しただけでした。無理せずに、ベットに横たわって秋の読書。玄さんが買って来た業田良家の「独裁君」を読む。シャルル民主主義人民共和国の大統領シャルル・ド・クサイの滑稽な独裁ライフを描いた4コマ漫画なのですが、その隙間にそっと挿入されていたチベットらしき国を描いた「慈悲と修羅」という一遍に、凹まされました。

 

仏様

(2008 小学館 ビックコミックスペシャル 業田良家 「独裁君」所収「慈悲と修羅」p176より)

話の筋は、本を買って読んでいただきたいのですが、この短い漫画の全編に通底するのは「かわいそうに」という、音、響きです。「かわいそうに」が、わたしたちの知る「わかいそうに」を越えて、この掌編のなかでは宇宙的な絶望の響きとなって忘れがたい余韻を残します。かわいそうなのは、拷問の末断種手術されたガンポなのか、辱められ虐殺された尼たちなのか、それとも人間にあるまじき(或はかくも人間らしい)残虐性を発揮する拷問者たちなのか。……。すべての人が、地の底、宇宙の果てから聞こえてくる「かわいそうに」の響きと沈黙の中で、どうしようもなく今日を生き、今日を死んでゆくのです……。などと考えていると、もうどうやって身体を動かせばよいのか、解らなくななって、じっと、天井を見ているばかりになってしまいます。

古本屋の日記 2011年9月8日