象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

ジャイナの旅路。

閉じたままの店の奥で真面目に仕事をしていると開けたまんまの引き戸の向こうから古書うにゃうにゃこの本屋で前にめちゃ嫌な思いをしたことがある云々という話し声が聞こえてぴたりと凍りつく。どんなことであろ?しばらく考え、追いかけて行ってその嫌な事とはなんであったのか問いただそうかとも思いましたがその人がさらに嫌な思いをするかもしれないと賢く気づき浮きあがった尻を椅子に戻しぴたり磔。そうだ。人は自分の気づかないところで沢山の人に嫌な思いをさせているに違いない、それは悪い事だ。普段は、その事実に薄々気がついていても知らんぷり、お前今日アリンコ踏んづけたろう、あの人のわずかな気持ちの動きを見逃したろう、隣の人の空気吸ってしまったろう、などと、自分を毎日問いつめるのはなかなかに生き辛くもあり、その生き辛さを回避するための鈍感力だけは一人前に身につけているわけです。そうか。それは知らなかったと云えば罪は回避されるのか?いやそんくらいの細かいことは悪い事でも、ましてや罪などと呼べるなにものかではない、かもしれない、はっきりしない細かい悪そうな悪くなさそうな自分の行いに対してどこまで真正面に自ら向き合い生きるべきなのか、ジャイナの金色の人にまた問いかけに行こうと思います。

古本屋の日記 2013年6月18日