象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

古本屋のいる街角。

堀寅造
(堀寅造画 明治当時の所見 郷土大阪の夜店出しの古本屋……)

 

戦後いつくらいまで見ることが出来たのでしょうか?今となっては懐かしく思い出され、語られる、夜店の古本屋の風景。……わたしがどんなに努力をしてもその足下にも及ばない大先輩の多くも、商売の始めは、大阪市内各地で曜日ごとに開かれる夜店の、その片隅であったと聞きます。市場で本を分けてもらい(昔は、新米の本屋は、なかなか分けてもらえんでなあ……)、リヤカーで夜店まで運んで並べるて、まあその当時は字ぃ書いてたらなんでもよう売れたからな、その売り上げもってまた市場まで、リヤカー押して分けてもらいに行く、それの繰り返しや。……そんなお話をノスタルジックな気分に浸って聞いたり読んだりして、ぼんやりと、長閑でいいなあと思ったりするわけですが、その商売は厳しく貧しく慎ましやかで、パソコンばかり見て冷たい夜風になんか晒されないきょうびのボンボンには、決して真似のできるものではないのです。地べたで、本を売って生きる……その強さが、本を大切に扱う心(並外れた執着心とも云えますが……)に繋がるのだなあと、軽いキーボードを叩きながら、思うわけです。

古本屋の日記 2013年3月29日