象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

セーヌの友達。

雨や、霰に打たれ

気まぐれな風に吹きさらされて

わたしはどんなお客さまにも

商売大事と勤めている。

ポン=ヌフの上に立って

わたしは毎日

歴史や寓話や恋の物語を売っている。

ほかのひとたちとは反対に

わたしの頭はからっぽだが

手には学問を持っている。

 

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「ーーパリの河岸で書物の番をするという風変わりな職業に従事するためには、野原でけだものの番をした経験をもっていることが望ましい。多くの古本屋たちは田舎の家の屋根の下で生活を始めている。学校で暗誦した学課や、ペローの童話を読んだことや、偶然に目に触れた一ページなどが彼らの使命を呼び覚まし、それがいつまでも消え去るがなかったのである。……農民と古本屋の職業に共通な特色は、不順な気候に対する服従である。農民と同じく、河岸の古本屋は毎朝空を眺めて、そこに見出す前兆によって自分の仕事を規正する。もし雨が降りそうであったなら、農民は屋内の仕事に没頭するが、古本屋たちは自分の書斎にとじこもるか、古本市に出かける。そのどちらの場合にも、類いのない行動の自由がその職業に結びついている。……古本屋たちは彼らの風変わりな職業に誠実である。それはおそらく警察庁では、誰にでも彼らの所有地になる八メートルを与えることをしないで、どの志願者についても詳しい調査をするからであろう。彼らは一旦古本屋になると終生それをつづける。途中で投げ出す者があっても、それはきわめて少ない。」

 

厚生書店で買った、講談社文芸文庫〜河盛好蔵 河岸の古本屋より

 

いつかわたしも、小粋なシャンソンでも口ずさみながら、セーヌ河岸のbouquinisteを冷やかして歩きたいと思っているわけです。フランス語が喋れれば、よりいっそう楽しいでしょうな。お互い、数少ない掘り出し物の自慢話などをして、結局今の一文無しを「ヴォアラ」とポケットの中身を見せ合って、そうだ、夜にはやっぱり安い酒場、なんか滅茶苦茶なことをわめいて大騒ぎしよう。そんで、俺もお前も生涯、馬鹿な一古本屋だと誓い合って、ういうい赤いのを矢鱈に飲んで、やつの倉庫でゲロは吐いて眠ろう。ぼんじゅーるとれざみ。奇麗な、血の海しゃないか。

古本屋の日記 2012年12月21日